2024年秋に施行された「フリーランス新法」。
企業との関係が不安定になりがちなフリーランスにとって、この法律は追い風となるのでしょうか?
特に地方都市や郊外エリアで活動するウェブ制作系のフリーランスに焦点を当て、実情と課題、変化の兆しを読み解いていきます。
Contents
フリーランス新法とは?——背景と要点まとめ
「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称「フリーランス新法」は、政府が2023年に成立させ、2024年秋に施行されました。
● 制定の背景
働き方が多様化し、個人事業主・副業フリーランスの数が増加する一方で、取引上のトラブルや「企業からのハラスメント」「支払い遅延」「契約の曖昧さ」といった問題が社会課題化。
政府は公正取引委員会と連携し、法整備によって企業とフリーランスの取引を明文化・保護する方向へ舵を切りました。
● 主な内容
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書面契約の義務化(電子でも可)
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発注側による報酬支払い義務:60日以内に支払うこと
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ハラスメント禁止と是正措置の仕組み
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募集内容の明示義務(報酬・納期・作業内容など)
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公正取引委員会への通報制度の整備
特定受託事業者=フリーランスのこと。とくに「業務委託契約で働く個人事業主」が対象。
地方のウェブ制作系フリーランスの現実
では、法律の話は一旦置いておいて、**地方で活動しているウェブ系フリーランス(デザイナー、コーダー、ディレクター、CMS構築者など)**の実情はどうでしょう?
● 地方の特性:関係性が命
都市部と違い、地方では「口コミ」「紹介」「顔が見える付き合い」がメインのため、
契約書すら交わさない口約束の取引もまだまだ多く見られます。
「請求書は要らないよ、LINEで金額だけ送って」
「デザイン、ちょっとおまけしてよ。あとロゴも入れて」
「報酬は売上が出たら払うよ」
こういった“なあなあ文化”が根付いており、報酬未払い・修正地獄・スコープ逸脱などが常態化しやすい土壌にあります。
フリーランス新法がもたらす変化とインパクト
● 変化①:契約書を交わす文化の必然化
→ これまでは「言った言わない」で揉めることも多かった案件。新法によって「契約書または契約内容の明示」が義務に。
※PDFでの合意、チャットでの明文化でもOKとされており、ツールを使えば難易度は高くありません。
● 変化②:報酬未払いの抑止力
→ 60日以内の支払い義務が法文化され、「売上が出たら払う」は通用しなくなります。
もし支払われない場合、フリーランスは公正取引委員会に通報できます。
● 変化③:ハラスメントの可視化
→ 地方では「お客さんは神様」的な空気が強く、精神的にきつくなることも多かったですが、暴言やパワハラ的指示があった場合、救済措置が明文化されます。
課題:フリーランス側の「交渉力」が育っていない
法律が整っても、使いこなすにはリテラシーが必要です。
地方のウェブフリーランスは、制作スキルはあっても「契約交渉」や「報酬交渉」「法的手段」に慣れていないことが多く、結果的に泣き寝入りが続く可能性も。
「この人、面倒になったら他の人に頼めばいいし」
という発注者の意識は、法整備だけでは変わりません。
フリーランスが今すぐやるべき対策
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契約テンプレートを整える(電子契約対応)
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報酬の支払い条件・期日を事前明示
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タスク範囲(納品物の定義)を文書で確定する
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単価の見直し・「安請け合い」の卒業
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取引先と対等に話す練習(スクリプトの準備)
まとめ:フリーランス新法は「武器」になる。だが、使わなければ意味がない
フリーランス新法は、地方で活動する制作者にとって大きなチャンスです。
契約文化の定着、報酬未払いリスクの軽減、精神的負担の軽減。
しかし、法律は万能ではなく、結局「使える人」だけが恩恵を受けます。
地方の制作フリーランスに必要なのは、「制作スキル+契約スキル+交渉リテラシー」。
この3点が揃えば、“安く使い倒される便利屋”から、“信頼される専門家”へと脱皮できます。
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