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世界経済の「リセットボタン」:ブレトンウッズ体制の誕生
第二次世界大戦が終わる前夜の1944年、アメリカ・ニューハンプシャー州の小さな保養地ブレトンウッズで、連合国44カ国が集まり、世界経済の新たな枠組みを決定しました。これがいわゆる**「ブレトンウッズ体制」**です。
この会議で築かれた枠組みは、アメリカ・ドルを基軸通貨とする金本位制に似た為替制度であり、戦後の世界経済を数十年にわたり支配する重要な仕組みとなります。
ブレトンウッズ体制の特徴
1. 米ドル=事実上の世界通貨へ
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各国通貨はドルと固定為替レートで結ばれ、
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ドルは1オンス=35ドルのレートで金と交換可能(※アメリカ政府が保証)
つまり、世界各国は金ではなくドルを「金に換えられる通貨」として保有することになったのです。
この仕組みが、「ドル=金と同じ価値がある」と信頼される世界を生み出しました。
2. IMFと世界銀行の創設
この体制の一環として、
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IMF(国際通貨基金):各国の為替安定と金融支援
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IBRD(世界銀行):戦後復興や開発支援の資金供与
が設立されました。これにより、経済危機や国際収支の悪化に対し、国家が協調して対応できる仕組みが整えられたのです。
なぜ金本位制ではなく「ドル本位制」だったのか?
それは、アメリカが世界最大の金保有国かつ戦勝国であり、圧倒的な経済力を誇っていたからです。実際、当時の金の70%近くはアメリカに集中していました。
金を直接保有する代わりに、「ドル=金」として扱えば、世界中の通貨が間接的に金とつながる。これが**「金・ドル本位制」**と呼ばれる独特のシステムです。
ブレトンウッズ体制の終焉:なぜ崩壊したのか?
1971年、当時のアメリカ大統領リチャード・ニクソンは、突如として金とドルの交換停止(ニクソン・ショック)を宣言します。これにより、ブレトンウッズ体制は実質的に崩壊しました。
崩壊の理由:
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ベトナム戦争によるアメリカの財政赤字とドルの乱発
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金の保有量を超えてドルが世界に溢れたため、交換保証が不可能に
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各国がドルから金へ殺到し始めるというパニック的状況
この結果、世界は変動為替相場制へと移行し、ドルと金の交換という約束は過去のものとなりました。
現代への影響:ブレトンウッズ体制が残したもの
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ドルは今も事実上の世界基軸通貨である(石油取引など)
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IMFや世界銀行は現在も国際経済の柱として活動中
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各国は金ではなく**「信頼」と「通貨政策」で通貨の価値を維持**している
また、現代の金融危機時のドルの影響力や、アメリカの利上げが新興国経済に与える影響など、ブレトンウッズの名残は色濃く残っています。
まとめ:ブレトンウッズ体制とは、ドルが世界を支配する時代の始まりだった
戦後の混乱を経済的に再構築するための壮大な枠組み、それがブレトンウッズ体制でした。
そして、それは単なる「経済システム」ではなく、政治・通貨・軍事力が融合した“ドル覇権”の土台となったのです。
今なお続く「ドル中心の世界」を理解する上で、ブレトンウッズ体制は現代経済の原点といえるでしょう。
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