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「価値」は1つじゃない?——2つの視点から見る商品やサービスの意味
マーケティングや経済の文脈でよく使われる「価値」という言葉。
しかし、その中身は一様ではありません。特に重要なのが「交換価値」と「経験価値」という2つの概念です。
この違いを理解することは、単にモノを売るだけでなく、「なぜ人がその商品を選ぶのか」を深く理解する手がかりになります。
交換価値とは?——「いくらで取引されるか」という価値
「交換価値(exchange value)」とは、ある商品が市場でどのくらいの価格で交換されるかを示す価値です。
たとえば、
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同じようなスマートフォンが、A社は10万円、B社は8万円
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同じ性能の車でも、ブランドやデザインで値段が異なる
これは、市場における価格・需給バランス・希少性・ブランド力などによって決まる「モノとしての価値」です。
特徴:
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客観的・数値化しやすい
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比較されやすい(スペック、コスパ)
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経済学的な評価軸
経験価値とは?——「それを通じて何を感じたか」という価値
「経験価値(experiential value)」とは、商品やサービスを使ったことによって得られる感情・記憶・体験そのものの価値です。
たとえば、
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旅行先での感動的な夕焼け
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職人の手仕事が光るコーヒーカップ
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家族との思い出が詰まった車
これらは、数字では測りにくいけれど、その人の人生に深く影響する価値です。
特徴:
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主観的・感情的
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ストーリーや体験に基づく
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ブランド体験やカスタマーエクスペリエンス(CX)に直結
事例で見る:スターバックスのコーヒーは高いか?
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交換価値の視点:コーヒー1杯が500円。コンビニなら100円。
→「割高」と感じる。 -
経験価値の視点:落ち着いた空間、名前を呼ばれて商品が手渡される体験、丁寧な接客
→「自分へのご褒美」「安心できる時間」としての価値
ここで重要なのは、スターバックスは単なるコーヒーではなく、“居心地の良い第三の場所”という経験価値を売っているという点です。
マーケティングにおける活用方法
1. 「モノ売り」から「コト売り」へ
現代の消費者は、スペックや価格だけでなく、「それによってどんな気持ちになれるか」を重視します。
これは「コト消費」とも呼ばれ、モノの消費が感情や体験に紐づく価値にシフトしていることを意味します。
2. 価格競争から脱却する戦略
「交換価値」だけを競っていると、必ず“価格の安い方”が選ばれる構図になります。
一方、「経験価値」にフォーカスすれば、値段が高くても選ばれる理由が生まれます。
例:Apple、無印良品、ブルーボトルコーヒー など
3. ブランド戦略との連動
経験価値はブランドイメージや世界観との親和性が高いため、マーケティング全体の設計において非常に重要です。
「ブランドを体験する」という言葉は、まさにこの文脈です。
経験価値を高めるためのヒント
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UX(ユーザー体験)を重視した設計
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顧客とのタッチポイントでの一貫性(接客・パッケージ・Webなど)
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ストーリーテリングを取り入れた商品紹介
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購入後の体験を含めた“商品設計”
まとめ:数字では測れない価値が、心を動かす時代
「交換価値」が“商品としての競争力”ならば、「経験価値」は“人に選ばれる理由”です。
価格やスペックだけでは語れない「なぜそれを選んだのか」にこそ、これからのマーケティングの核心があります。
“買われる”商品から、“語られる”商品へ。
その鍵を握るのが、経験価値という視点なのです。
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