なぜ「150人」が限界なのか? ダンバー数が教える人間関係のリアルな上限

🧠 ダンバー数とは?

ダンバー数(Dunbar’s Number)とは、
人間が安定した社会的関係を築ける相手の上限がおよそ150人
であるという理論です。

この理論を提唱したのは、イギリスの人類学者ロビン・ダンバー(Robin Dunbar)
彼は霊長類の脳容量と社会集団の規模との相関を調べ、人間の場合、新皮質の大きさから計算すると「150人」が限界であると導き出しました。


🔍 具体的に「150人」とはどういう意味?

この「150人」は、「ただ顔を知っている人」ではなく、継続的で意味のある関係性を保てる人数を指します。
たとえば…

  • 誕生日を覚えている

  • 最近会っていないけど、話しかければすぐ会話できる

  • 結婚や転職などの節目を共有できるレベル

こうした「互いにある程度の関心と信頼を持てる関係」の人数が、約150人というわけです。


📊 ダンバーの研究から見える“人間関係の階層”

ロビン・ダンバーは、人間の人間関係を**「同心円状の階層構造」**として捉えました。

人数の目安 関係性の深さ
🧡 1層目 5人 親密な家族・恋人・親友レベル
💛 2層目 15人 頼れる友人や身近な同僚
💚 3層目 50人 月1程度で関わる関係(飲み仲間など)
💙 4層目 150人 年に1〜2度交流ある知人レベル(冠婚葬祭)
🤍 5層目 500人〜 名前と顔が一致するが、深くは知らない

この構造は、人間の認知資源(注意・記憶・感情)が限られていることに基づいています。


🧬 脳の大きさと社会の規模の関係

ダンバーは、霊長類の脳容量(新皮質の大きさ)と群れのサイズに強い相関があることを発見しました。

種類 新皮質のサイズ 社会集団の規模
マカクザル 小さい 約20匹
チンパンジー 中程度 約50匹
人間 大きい 約150人

つまり、人間の社会的認知能力(誰が誰で、誰と誰が仲が悪い…といった「社会マップ」)は、150人分程度のネットワークを処理するように進化してきたということです。


🌍 ダンバー数は社会やビジネスにどう応用されている?

✅ 軍隊や部族単位

  • 古代の狩猟採集社会や部族社会の構成人数もおおよそ120〜150人

  • 現代の軍隊の中隊規模も約150人前後

✅ 組織論

  • ティール組織ホラクラシーなどの分散型組織は、小規模グループ(〜150人)での自己管理を推奨

  • スタートアップ企業も150人を越えると階層管理が必要になる傾向が

✅ SNSとコミュニティデザイン

  • Facebookの平均フレンド数は150〜200人

  • SlackやDiscordでも、150人を越えると「空気感」が失われやすい


🧘‍♀️ なぜ150人を越えるとつながりが薄れるのか?

理由は主に以下の3つです:

  1. 記憶と注意の限界
     → 誰がどんな人か、関係性を維持するには記憶容量が足りない

  2. 感情の配分が困難
     → 深い関心を持てるのはせいぜい5〜15人。150人に平等な感情投入は不可能

  3. 信頼の希薄化
     → 顔が見えにくくなり、暗黙のルールや空気が伝わらなくなる


🤖 AI時代における「拡張されたダンバー数」?

興味深いのは、テクノロジーによってダンバー数を拡張できるかもしれないという議論です。

  • スマホやSNSによって、関係の記憶・記録が外部化されている

  • ChatGPTやCRMツールによって、「誰と何を話したか」を覚えておく必要がなくなる

それでも、心のリソースは有限なので、真の信頼関係は結局150人前後に収束するとも言われています。


🔚 まとめ:「つながりすぎない勇気」が大事な時代

「誰とでもつながれる時代に、誰と深くつながるかを選ぶことが重要」

ダンバー数は、**人間関係の“認知的キャパシティ”**に対する現実的な指標です。

SNSで数千人とつながっていても、
実際にあなたのことを心から気にかけてくれる人は、きっと150人より少ないはず。

だからこそ、**本当に大事な人との関係を深めるために、意識的な「関係の取捨選択」**が求められているのです。

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