Contents
はじめに:なぜ今「似ている」と語られるのか?
2024年にアニメ化され話題沸騰となった『俺だけレベルアップな件(Solo Leveling)』は、韓国発の“異世界バトルファンタジー”である。その華麗な戦闘描写、ダークヒーローの成長譚、そしてダンジョンという概念——これらの要素が「HUNTER×HUNTER(ハンターハンター)」とどこか似ている、とSNS上でたびたび議論されている。
果たして、それはただの偶然か? それとも、ジャンルを超えた“血縁”とも言える共通性なのか? 本稿では両者を詳細に読み解きながら、「何が似ていて、何が違うのか?」を浮き彫りにしていく。
ダンジョンという舞台:謎を孕む空間が主人公を育てる
『俺だけレベルアップな件』では、ダンジョン=世界の異常事態であり、モンスターの巣窟だ。ハンターたちはその脅威に挑む職業的存在として描かれる。
一方、『HUNTER×HUNTER』の「グリードアイランド」や「キメラアント編」では、異空間や突如現れる強敵が主人公たちを成長させていく。
どちらも、“異質な空間”がキャラクターの変化を加速させる舞台装置として機能しており、視聴者は「試練を越える者の物語」に魅了される。
成長の構造:最弱から最強へ——「努力型」のロジック
『俺だけレベルアップな件』の水篠旬(シン・スン)は、E級から無限にレベルアップするチートスキルを持ちながら、地道に戦いを重ねていく。
彼は“選ばれし者”ではあるが、同時に“努力しなければ死ぬ”立場だ。
一方で『HUNTER×HUNTER』のゴン=フリークスも、類まれなる才能を持ちながら、その力は常に命懸けの試練によって鍛えられていく。特に念能力の習得や制約と誓約などは、旬の「システムに従った成長」と非常に似た構造を持つ。
どちらも「理不尽な強者に挑むために、自分を制御し鍛えていく」という“自己鍛錬型ヒーロー”だ。
能力バトルの美学:念 vs シャドウ
『HUNTER×HUNTER』における念能力は、思想・性格・戦術のすべてを可視化したシステムだ。能力は使い手の“人間性”そのものであり、戦闘はまるで心理戦のように進行する。
一方、『俺だけレベルアップな件』では、影の軍団(シャドウ)を操る能力や、ダンジョンの主との戦闘において“タイマンの駆け引き”が重視される。
共通しているのは、**「力=精神の具現化」**という戦闘哲学だ。ただ強いだけでは勝てない。どれだけ冷静に、知的に、制限を逆手に取れるかが勝敗を分ける。
「父親」の不在と存在感
実は両作品ともに、“父親”という存在が物語の背後で大きな影を落としている。
-
ゴンは「ジン・フリークス」を探して旅に出る。彼の成長は“父を超える”物語でもある。
-
旬は行方不明だった父・水篠一樹との再会とその役割が、物語後半で大きなカギを握る。
このように、「血の物語」「継承と越境」は、両作品に共通する“深層テーマ”であり、少年漫画やファンタジーの王道を内包している。
結論:二つの物語は“系譜”として語るべきだ
「似ている」と言われるのは、単なる設定の重なりだけではない。
むしろ、それぞれの作品が“戦いの意味”や“成長の苦しみ”を正面から描いているからこそ、観る者に同じような熱を与えるのだ。
『俺だけレベルアップな件』は、韓国的なテンポの良さとビジュアル主義で突き進み、
『HUNTER×HUNTER』は、日本的な哲学と緻密な戦略性で深みを持たせる。
この2作は、まるで異なる文化圏から生まれた“魂の鏡写し”のような関係にある。
コメント