20世紀初頭、絵画の世界に革命をもたらした二つの前衛的な芸術運動——キュビズムとフォービズム。
ピカソやマティスといった巨匠たちの名を語るうえでも欠かせないこの2つの流派は、一見似て非なるものでありながら、どちらも「見えるものの再定義」に挑戦した点で共通しています。
本記事では、それぞれの特徴や代表作、そして相違点をわかりやすく紹介します。
Contents
キュビズム(Cubism)とは?
ピカソとブラックが切り開いた“見る”の再構築
キュビズムは、1907年頃から始まった芸術運動で、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックが中心となって発展させました。
それまでの絵画が「一つの視点からの写実」を追求していたのに対し、キュビズムでは、複数の視点から見た物体を一枚のキャンバス上に同時に描くことを試みました。
特徴
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幾何学的な形態(キューブ=立方体)で構成される
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複数の視点を統合した構図
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遠近法や陰影を否定
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初期は色彩を抑え、構造に重きを置いた
キュビズムの代表作
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パブロ・ピカソ『アヴィニョンの娘たち』(1907年)
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ジョルジュ・ブラック『レスタックの家』(1908年)
キュビズムの影響
キュビズムは後の未来派や構成主義、抽象絵画へと影響を与え、現代アートの礎を築いたともいえます。
フォービズム(Fauvism)とは?
色彩の“野獣”たちによる爆発
フォービズム(フランス語で「野獣派」)は、アンリ・マティスを筆頭に、1905年のサロン・ドートンヌで鮮烈なデビューを果たしました。
その鮮やかすぎる色彩表現から、批評家に「まるで野獣のようだ」と揶揄されたことが名前の由来です。
特徴
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極端に強調された鮮やかな色彩
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現実の色とは異なる主観的な配色
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素早い筆致と大胆な形態
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空間よりも色の感情表現を重視
フォービズムの代表作
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アンリ・マティス『赤い部屋(ハーモニー・イン・レッド)』(1908年)
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アンドレ・ドラン『シャトゥの橋』(1906年)
フォービズムの影響
フォービズムは短命な運動でしたが、色彩の力を解放したその精神は、後の表現主義や抽象芸術へ大きな影響を与えました。
キュビズムとフォービズムの違いとは?
項目 | キュビズム | フォービズム |
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主導者 | パブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラック | アンリ・マティス、アンドレ・ドラン |
主な関心 | 構造、形態、視点の再構成 | 感情表現、色彩の解放 |
色使い | 抑制された色彩 | 鮮やかで主観的な色彩 |
時期 | 1907年〜1920年代初頭 | 1905年〜約1910年 |
対象の描き方 | 幾何学的に分解し再構築 | 現実の色にとらわれない自由な描写 |
なぜ今、キュビズムとフォービズムが注目されるのか?
現代のデザインやアートシーンでは、“リアルさ”を超えた表現が再び見直されています。
NFTアートや抽象作品、メタバース空間のデザインにも、キュビズム的な視点やフォービズム的な色彩感覚が取り入れられており、100年以上前のムーブメントが新たな文脈で息を吹き返しています。
まとめ:構造のキュビズム、色彩のフォービズム
キュビズムとフォービズムは、どちらも「見える世界を、どう描くか?」という芸術の根源的な問いに挑んだムーブメントです。
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キュビズムは、ものの構造や視点に対して革新を起こした。
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フォービズムは、色彩による感情の解放を目指した。
芸術史に興味がある方は、ぜひ一度それぞれの代表作品をじっくりと見比べてみてください。きっと、現代アートの理解にもつながるはずです。
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