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はじめに
毎年、夏になると話題に上がる「熱中症」。ニュースでは高齢者や子ども、スポーツ中の若者などが搬送されるケースが後を絶ちません。
では、なぜ同じ暑さの中でも、熱中症になりやすい人と、そうでない人がいるのでしょうか?
今回は、**医学的な視点から見た「熱中症になりやすい人の特徴」**について詳しく解説し、具体的な予防策も紹介します。
熱中症とは? ── 体温調節の限界点
熱中症とは、高温多湿の環境下で体温調節がうまくいかず、体内に熱がこもってしまう状態です。
医学的には以下の3つに分類されます。
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熱失神(heat syncope):一時的な脳血流の低下で起こるめまいや立ちくらみ
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熱けいれん(heat cramps):汗とともに電解質が失われた結果の筋肉のけいれん
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熱射病(heat stroke):深部体温が40℃を超え、中枢神経障害を伴う重篤な状態
熱中症になりやすい人の7つの特徴
1. 高齢者(特に75歳以上)
高齢者は、体温調節機能が加齢によって低下しています。特に問題なのは次の点です:
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発汗機能の低下
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皮膚血流量の減少
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のどの渇きを感じにくくなる(視床下部の反応鈍化)
また、**高血圧や糖尿病などの慢性疾患、服薬(利尿薬や抗コリン薬)**もリスクを高めます。
2. 乳幼児・子ども
乳幼児は体温調節機構が未熟で、体表面積に対して体重の比率が高いため、外気温の影響を強く受けます。さらに自分で水分を取ることも難しいため、周囲の配慮が欠かせません。
3. 肥満の人
脂肪組織は断熱材のような性質を持ち、体内の熱が外に逃げにくくなります。また、心肺負荷も高いため、暑熱下での身体活動が危険です。
4. 糖尿病・心不全などの慢性疾患を持つ人
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糖尿病患者は発汗機能や末梢神経の働きが鈍ることで、熱中症のリスクが高くなります。
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心不全患者は心拍出量の制限によって、血液による体熱の放散が難しくなります。
5. 睡眠不足・脱水状態の人
水分・電解質の不足は、血液循環や体温調節機能を著しく低下させます。
また睡眠不足は自律神経バランスを崩し、暑さに対する耐性が低くなります。
6. 暑熱順化ができていない人
「暑熱順化」とは、汗をかきやすくなる、心拍数が下がるなどの暑さへの生理的適応のこと。
急に猛暑が来た場合や、屋内ばかりで過ごしていた人は、熱に対する耐性が低いため注意が必要です。
7. アルコールやカフェインを摂取しすぎている人
アルコールやカフェインは利尿作用があり、体内の水分を排出してしまいます。
また、アルコールは体温感受性を鈍らせ、**熱中症を「自覚しにくくなる」**点でも危険です。
医学的に見た「熱中症予防」の基本原則
1. こまめな水分・電解質補給
単なる水ではなく、ナトリウム(塩分)やカリウムを含む飲料(経口補水液やスポーツドリンク)を推奨。
1回の補給量は150〜250mlを1時間に数回が目安です。
2. 体温調節のための環境整備
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エアコン使用をためらわない(28℃以下推奨)
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遮光カーテンやサーキュレーターで室内温度を一定に保つ
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外出時は日傘・帽子・冷却グッズを活用
3. 服薬中の人は医師に相談を
利尿剤・抗ヒスタミン薬・精神安定剤・抗コリン薬などを服用中の人は、脱水や体温上昇に気づきにくい可能性があります。
医師の指示を仰ぎながら、夏季の体調管理を行いましょう。
まとめ
熱中症は、単なる暑さだけではなく、個人の体調や背景疾患、環境要因が複雑に絡み合って発生します。
特に以下に当てはまる方は要注意です:
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高齢者や乳幼児
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慢性疾患のある方
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暑さにまだ慣れていない方
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水分や電解質の不足しがちな方
熱中症は命にかかわる疾患ですが、正しい知識と対策があれば予防可能です。
日々の健康管理と周囲への気配りを忘れず、安心・安全な夏を過ごしましょう。
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