ベルクソンの「創造的進化論」とは何か ― 生の流れと自由の哲学

進化論をめぐるベルクソンの問題意識

20世紀初頭、進化論はダーウィン以降の自然科学における重要なテーマでした。しかし、進化を「機械的な因果律」や「目的論的な方向性」として捉える議論は、どちらも生命の多様性や生成のダイナミズムを十分に説明できないとベルクソンは考えました。
彼は「生命の進化は単なる偶然や機械的必然ではなく、創造的な流れそのものだ」と捉えたのです。

エラン・ヴィタル(生命の飛躍)

ベルクソンの核心概念が 「エラン・ヴィタル(élan vital)」 ― 生命の飛躍、生命衝動です。
これは固定化された「物質」や「目的」ではなく、生命そのものを突き動かす生成の力。生物が分化し、多様な進化を遂げていくのは、この創造的エネルギーが展開していくからだとされます。

つまり、進化は既存の設計図に従った「再生産」ではなく、常に新しさを生み出す「創造的な生成」なのです。

空間的知性と持続の直観

ベルクソンは、人間の知性が「物質的な世界」に適応して発達したため、生命を静的に、機械的に理解しがちだと批判しました。
これに対し、生命の本質をとらえるには 直観(intuition) が必要だとします。直観によって、私たちは「持続(durée)」 ― 過去と現在が流れるようにつながる生の時間 ― を感じ取ることができます。

ここに、ベルクソンの独自性があります。科学的知性の枠を超えて、生命を「生きられる流れ」として捉える方法を提示したのです。

哲学史への影響

『創造的進化』は、単なる進化論批判にとどまらず、時間・自由・創造をめぐる20世紀思想に大きな影響を与えました。
ベルクソンの思想は、サルトルやメルロ=ポンティといった実存主義や現象学者にも響き、さらにはドゥルーズによって再解釈され、ポスト構造主義の系譜にも接続されます。

また「進化は創造である」という視点は、科学的進化論に新たな哲学的地平を与えたといえるでしょう。

まとめ

  • ベルクソンは生命を「偶然でも必然でもなく、創造の流れ」として理解した

  • その鍵概念が エラン・ヴィタル(生命衝動)

  • 知性の分析を超えた「直観」によって、生の持続を捉える必要がある

  • 哲学・科学双方に影響を与えた20世紀の重要思想

生命を「生きられる流れ」として理解しようとするベルクソンの姿勢は、AIやバイオテクノロジーの進展する現代においてもなお、問いかけ続けているように思われます。

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